私たちがスマートホーム基盤を”すべて自社開発”する理由

皆さん、こんにちは。アクセルラボCTOの青木です。

前回は私たちがテックブログを開設した背景にある想いや目的、そしてアクセルラボという会社とプロダクトについてご紹介させていただきました。

今回のテーマは「なぜアクセルラボは、スマートホームの基盤となる技術を”すべて自社開発”することにこだわるのか?」です。私たちが他社への依存から脱却し、プラットフォーム、ゲートウェイ、そしてサービスまでを一気通貫で開発する道を選んだ理由と背景、自社開発だからこそ実現できる価値と未来について、詳しくお話ししたいと思います。

すべて自社開発への道のり:他社依存時代の課題

アクセルラボがスマートホーム事業を本格的に開始した当初、私たちは多くの企業と同様に、他社製のIoTプラットフォームとゲートウェイを利用していました。

プラットフォーム開発前の構成。他社スマートホームサービスは現在も同様の構成。

しかし、サービスを展開していく中で、乗り越えなければならない大きな壁にいくつも突き当たりました。

スピード感の欠如と機能拡張の限界:

日本のお客様からいただく細やかな要望や、刻々と変化する市場のニーズに応えようとしても、他社プラットフォームの仕様や開発ロードマップに縛られ、迅速な機能改善や独自機能の実装が困難でした。自分たちのアイデアをすぐに形にできないもどかしさを常に感じていました。

データという”宝”を活かせないジレンマ:

スマートホームから得られるデータは、サービス改善や新たな価値創出のための貴重な資源です。しかし、他社プラットフォームでは収集できるデータが限られていたり、利用規約によって自由な活用が制限されたりしていました。これでは、データドリブンなプロダクト開発は望めません。

セキュリティとプライバシーへの拭えぬ懸念:

特に海外製のプラットフォームを利用する場合、日本の法律や商習慣、そしてお客様のプライバシー意識に完全に準拠できているのか、常に不安がつきまといました。お客様の大切な情報をお預かりする上で、これは看過できない課題でした。

ベンダーロックインという将来リスク:

特定の企業の技術に依存し続けることは、将来的なコスト増や、サービス提供における自由度の喪失といったリスクをはらみます。長期的な視点で事業を発展させるためには、技術的な主導権を自社で握る必要がありました。

これらの課題を前に、私たちは大きな決断を迫られました。「このまま他社基盤の上でサービスを続けるのか、それとも、困難な道のりであっても自らで基盤を創り上げるのか」。

答えは後者でした。真にユーザー価値を追求し、日本の市場でスマートホームを「あたりまえ」にするためには、技術的な制約から解放され、自由な発想でサービスを進化させられる「自社開発基盤」が不可欠だと確信したのです。

すべて自社開発への道のり:覚悟を決めた挑戦

この決意のもと、私たちは大規模な開発プロジェクトに次々と着手しました。

「Chariot」プロジェクト:

当時のChariotプロジェクト計画書

まず着手したのは、スマートホームシステムの心臓部であるIoTプラットフォームの自社開発です。 当初は、アメリカの企業が提供するIoTプラットフォームの採用を検討していました。現地のオフィスを訪ね、アーキテクチャの説明を受け、ハンズオン形式のレクチャーにも参加しました。 しかし、検討を進める中で、他社のプラットフォームに依存することによる不自由さやリスクを改めて認識し、自社開発へと舵を切る決断をしました。 こうしてコードネーム「Chariot」というプロジェクトが進行し、完全なAWSネイティブのアーキテクチャで構成されたIoTプラットフォームが誕生しました。「Chariot」プロジェクトの詳細については別の機会にご紹介したいと思います。 このプロジェクトによって、他社プラットフォームからの脱却を果たし、データ管理、機能拡張、セキュリティといったすべての面で、自社のコントロール下に置くことが可能になりました。

「Ogre」プロジェクト:

当時のOgreプロジェクト計画書

「Chariot」プロジェクトと並行して、宅内のデバイスとクラウドを繋ぐIoTゲートウェイの自社開発に取り組みました。プロジェクト発足当初、次世代スマートホームの統一規格「Matter」はまだ存在せず、その前身である「CHIP(Connected Home over IP)」によって統一規格の検討が進められている段階でした。当初の「Ogre」プロジェクトは、既存の通信プロトコルを搭載したIoTゲートウェイと制御クラウドを自社開発するという計画でした。

しかしプロジェクトの進行中に「Matter」規格が策定・公開されたことを受け、単なる既存ゲートウェイの代替にとどまらず、「Matter」対応を見据えた、将来的なデバイス連携の拡張性と相互運用性を備えたプロジェクトへと方向転換しました。「Matter」規格の登場以前から独自ゲートウェイの開発を進めていたことにより、「Matter」対応にもいち早く着手でき、日本初となる国内認証機関によるMatter認証の取得に繋がったのは、まさにタイミングに恵まれた結果だといえます。

こうした経緯を経て、国産スマートホームプラットフォームの中核となる「Matter」対応ゲートウェイを完成させることができました。「Ogre」プロジェクトは、新規格「Matter」への対応という非常にチャレンジングな取り組みであり、その開発の裏側には多くの試行錯誤がありました。開発の中で生まれたさまざまなエピソードについては、また別の機会にご紹介したいと思います。

もちろん、これらのプロジェクトは決して平坦な道のりではありませんでした。しかし、この挑戦を経たからこそ、現在のアクセルラボが誇る技術的な優位性が確立されたのです。これらの基盤の上で、主力プロダクト「SpaceCore」のターゲット顧客別のサービス分割(SpaceCore Pro / SpaceCore Home)を実現させる事で、アクセルラボはスマートホームのサービスからプラットフォーム、ゲートウェイまでを一気通貫で開発・提供できる体制を築き上げました。

現状のサービス構成。他社スマートホームサービスにはない技術的優位性を獲得。

自社開発がもたらす圧倒的な価値と、アクセルラボならではの強み

この「すべて自社開発」という選択は、私たちに他社にはない圧倒的な価値と競争優位性をもたらしてくれています。

1. 技術的独立性 × 迅速な市場対応力 = 日本最適化:

システム全体を自社で把握・管理しているため、日本市場特有のニーズや法規制、商習慣の変化に対して、どこよりも早く、的確に対応できます。「かゆいところに手が届く」機能改善や、日本家屋に適したデバイス連携などを、スピード感を持って実現できるのが最大の強みです。

2. データ主権 × 高度なデータ活用 = データドリブン進化:

収集されるすべてのデータを、安全な国内クラウド基盤で適切に管理・分析し、サービスの改善や新たな価値創造に活かすことができます。まさにこれから本格化する、データに基づいた「プロダクトグロース開発」において、このデータ主権は不可欠なエンジンとなります。

3. 国産プラットフォーム × 自社管理 = 揺るぎない信頼性:

お客様のデータはすべて国内で管理され、セキュリティ対策も自社の責任において徹底しています。海外プラットフォーム利用時に懸念されるリスクを排除し、日本のセキュリティ基準(JC-STAR認証(※)取得も進行中)にも準拠した、安心・安全なサービスを提供できることが、お客様からの信頼の基盤となっています。

(※)JC-STARは、総務省が策定した日本のIoTセキュリティ認証制度です。スマート家電などのIoT機器の安全性を国際基準に基づいて3段階で評価し、信頼できる製品を見分けやすくします。

4. Matter対応 × プラットフォーム提供力 = 無限の拡張性:

自社開発のMatter対応ゲートウェイ「aliehub」により、国内外の多様なスマートデバイスとの連携が飛躍的に容易になります。ユーザーはメーカーに縛られることなく、自由にデバイスを選べるようになります。さらに、自社プラットフォーム「alie+」を他社に提供することで、スマートホームの枠を超えた様々な事業者との連携を加速させ、より豊かなエコシステムを構築していくことが可能です。また、ゲートウェイ機能自体も、将来的には専用機だけでなく、他の機器に組み込むといった柔軟な展開も可能です。

自社開発を支える「人」と「文化」

この困難な「すべて自社開発」という道を歩み、そして成功させることができたのは、技術力だけではありません。それを支える「人」と「文化」の存在が不可欠でした。

アクセルラボには、Web開発、アプリ開発、クラウドインフラ、組み込み開発に至るまで、多様なバックグラウンドを持つ専門家が集結しています。そして、私たちは単に与えられた仕様をこなすのではなく、「プロダクト志向チーム」として、職種や部署の壁を越え、プロダクト全体の成功のために何ができるかを常に考え、議論し、協力し合う文化を目指しています。

その根底には、Mission「『空間』にテクノロジーを実装することで、『シームレスな世界』をデザインする」Vision「IoTを、日本社会の『あたりまえ』に」という、全社で共有する羅針盤があります。自社開発によって得た技術という武器を最大限に活かし、このMissionとVisionを実現するために、私たちは一丸となってプロダクト開発に取り組んでいます。

未来へ:自社開発基盤の上で、スマートホームの新たな地平を切り拓く

数年にわたる基盤開発フェーズを経て、私たちは今、その強固な土台の上に、プロダクト価値を飛躍的に向上させる「プロダクトグロースフェーズ」へと本格的に移行しています。

2025年10月には、自社開発ゲートウェイ「aliehub」の量産・提供開始を予定しています。これにより、対応可能なMatterデバイスが大幅に増加し、お客様の選択肢はさらに広がります。

また、自社開発の基盤があるからこそ実現可能な、ユニークな新プロダクトの開発も進行中です。これは、賃貸住宅において賃貸管理会社への問い合わせを大幅に低減し、空室中の内見にもIoTを活用して、無人でも安全・快適に実施できる仕組みを提供します。さらに、入居者にはインターホンモニターやセキュリティコントローラーとしても活用できる、リッチなスマートホーム体験を届けることを目指しています。私たちの基盤技術と市場ニーズを結びつけた、象徴的なプロダクトとなるでしょう。新プロダクトの詳細については、追ってご紹介いたします。

将来的にはスマートホームの枠を超えた新たな領域にも挑戦していきます。そして、自社プラットフォーム「alie+」を核として、住宅設備メーカーや家電メーカー、さらには異業種のパートナーとの連携を強化し、オープンなエコシステムを構築することで、Visionである「2028年までに100万デバイス接続」を達成し、「IoTを、日本社会の『あたりまえ』に」する未来を必ず実現します。

おわりに

「すべて自社開発」へのこだわり。それは、単なる技術的な選択ではなく、私たちがお客様に最高のスマートホーム体験を提供し、日本のIoT市場をリードしていくための、覚悟であり、未来への投資です。

このテックブログでは、これからも私たちの技術的な挑戦やプロダクト開発の舞台裏を、包み隠さずお伝えしていきたいと思っています。私たちの取り組みが、スマートホームやIoTに関わるすべての方々にとって、何かしらのヒントや刺激となれば幸いです。

テックブログは月に2回のペースで更新していく予定です。 ぜひ、今後のアクセルラボテックブログにご期待ください!

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